慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関する正しい知識の普及を通じて国民の健康増進に寄与することを目的として活動する、一般社団法人GOLD日本委員会(代表理事: 長瀬隆英、東京大学医学部呼吸器内科学 教授)は、2016年12月に、20代以上の男女10,000人を対象にインターネットによるCOPD認知度把握調査を実施した。その結果、COPDの認知度は25.0%となった。この認知度把握調査は、GOLD日本委員会が2009年から毎年1回、12月に行っているものである(2009年のみ2回実施)。COPDの認知度は2013年の30.5%まで毎年上昇してきたが、この年をピークに低下に転じ、2016年には2015年の27.3%からさらに2.3ポイント低下した。
また、COPDについて「どんな病気かよく知っている」と回答した110人にCOPDの認知時期について尋ねたところ、この3年の間にCOPDを知った人は合わせて20.9%で、2015年の44.5%に比べて半分以下に減少した。同様に、COPDの認知経路について尋ねたところ、第1位は2015年と同じく「テレビ」だったが、その人数は56人から45人に減少した。第2位も2015年と同じ「医師や医療関係者から聞いて」で、38人から40人に増加した。そして、第3位は「インターネット」で25人から26人と微増し、2015年第3位の「新聞」を逆転した。
この結果について、GOLD日本委員会 代表理事の長瀬隆英医師は次のように述べている。
「COPDの認知度は、2011年から順調に上昇し、2013年には30%を超えたが、2016年の調査では25%とさらに低下し、2011年に並ぶ結果となった。認知度とテレビをはじめとするマス・メディアでの露出は関係が深く、過去に認知度が上昇した背景には、製薬企業やCOPD啓発プロジェクト*2による啓発テレビCMの放映等が影響していると考えられる。実際、COPD認知度およびCOPDの認知経路として『テレビ』を挙げた人数の推移は相関関係にある。近年認知度が下降傾向にあるのは、COPDのマス・メディアへの露出が少ないことが直接的な原因の一つだと考える。
厚生労働省は2012年に公表した「健康日本21(第二次)」で2022年度までにCOPD認知度80%以上にするという目標を掲げ、国を挙げてCOPDの認知度向上に取り組む方針を示してから4年が経過した現在、一旦は上昇に向かっていたCOPD認知度が『健康日本21(第二次)』公表時点と同水準である25.0%まで低下してきていることに対し、重大な危機感を表明する。早急に国を挙げ、新たなアプローチでCOPD認知度向上に取り組むことが求められていると考える。
GOLD日本委員会では、健康政策の要となる自治体の方々にCOPDの問題を知り、高い意識を持って各地域での啓発活動に取り組んでいただくことを目的とした『自治体健康政策担当者向けCOPD講習会』事業を、現在までに18都道府県で実施しており、(独)環境再生保全機構との協業で来春にも大阪府・神奈川県で開催する予定。また、11月16日の世界COPDデーに先駆けて『日本COPDサミット』*3を(一社)日本呼吸器学会・(公財)日本呼吸器財団とともに開催し、本年よりメディア関係者のみならず医療関係者や自治体健康政策担当者へのアピールを実施したほか、関連学会へのブース出展で、医療関係者への啓発も積極的に行ってきた。今回の調査でもCOPD認知経路として『医師や医療関係者から聞いて』が『テレビ』に次いで2番目に多く挙げられ、その数も微増していることから、COPD認知度を高めるための重要な経路と考え、自治体の保健師などを含めた医療関係者に対する啓発を、今後さらに継続実施していきたいと考えている。」
*1 2009年のみ、7月と12月の2回実施。
*2 COPD啓発プロジェクト: 日本COPD対策推進会議(日本医師会、日本呼吸器学会、結核予防会、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会、GOLD日本委員会)、日本医学会が後援して2012年10月に発足したプロジェクトで、新聞、テレビ等のマス・メディアを活用した継続的なCOPDの啓発活動をめざしている。
*3 日本COPDサミット: 2016年は2015年に続き第3回目の開催。2016年は主催のGOLD日本委員会・(一社)日本呼吸器学会・(公財)日本呼吸器財団、共催の(公社)日本医師会・日本COPD対策推進会議・(公財)結核予防会・(一社)日本呼吸ケア・リハビリテーション学会・日本呼吸器疾患患者団体連合会・慢性呼吸器疾患対策推進議員連盟・(一社)COPD啓発プロジェクトの10団体で開催した。
◆COPDとは
COPDは、喫煙等の刺激による肺の慢性的な炎症反応を基本病態とする呼吸器疾患。日本人男性の死亡原因の第8位となっているこの疾患は、重症化すると患者の日常生活に著しい障害をもたらす。できるだけ早期に発見して重症化を防ぐ治療を始めることが重要であると言われているが、早期診断は進んでいない。この背景には、COPDに対する社会的な認知度が低いことが問題とされている。
◆健康日本21(第二次)とCOPD
厚生労働省は2012年7月に「21世紀における第二次国民健康づくり運動(健康日本21(第二次))」の中で、COPDの認知度をメタボリックシンドローム並みに上昇させること(平成23年(2011年)12月に25.1%であった国民の認知度を平成34年度までに80%にする)を目標として掲げ、国を挙げてCOPDの認知度向上に取り組む方針を示している。
<調査の概要>
方法: インターネット調査
●予備調査(認知度調査)
期間: 2016.12.1-5
対象: マクロミル社調査パネルの中から性(男・女)、年代(20代・30代・40代・50代・60歳以上)別に1,000人ずつを均等ランダム抽出した10,000人
質問: Q1. あなたはCOPD(シー・オー・ピー・ディー)という病気を知っていますか?
Q2. あなたは「肺年齢」の検査について知っていますか?
Q3. 「COPDの早期発見に肺年齢の検査が有効である」と言われていることを知っていますか?
●本調査(認知状況詳細調査)
期間: 2016.12.2-5
対象: 予備調査でCOPDが「どんな病気かよく知っている」と回答した人の中から性(男・女)、年代(20代・30代・40代・50代・60歳以上)別に11人ずつを均等ランダム抽出した110人
質問: Q1. COPD(シー・オー・ピー・ディー)という病気について知ったのはいつですか?
Q2. どのような経路でCOPDについて知りましたか?
Q3. COPDの原因の90%以上は喫煙であることを知っていますか?
Q4. 喫煙経験のある40歳以上の8人に1人は、COPDの可能性があることを知っていますか?
Q5. COPDの主な症状は慢性的な咳と痰(たん)、息切れであることを知っていますか?
【一般社団法人 GOLD日本委員会について】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関する正しい知識の普及を通じて国民の健康増進に寄与することを目的に、順天堂大学名誉教授 福地義之助らが中心となって、2012年10月9日に設立された。日本でのGOLDの活動は、2001年のGOLDの最初のガイドライン(COPDの予防、診断、治療に関するWorkshop Report)の発表を受けて2002年にスタートし、2004年に「世界COPDデー推進日本委員会」、2007年に「GOLD日本委員会」を組織してCOPDの啓発活動に取り組んできた。2012年、厚生労働省が健康日本21(第二次)で国を挙げてCOPDの認知率向上に取り組む方針を示したことを受け、より公的な団体として活動の幅を広げるため、一般社団法人として再スタートした。
http://www.gold-jac.jp/
【GOLD(the Global initiative for chronic Obstructive Lung Disease: “慢性閉塞性肺疾患に対するグローバル・イニシアティブ”)とは】
世界保健機関(WHO: World Health Organization)と、米国心臓、肺、血液研究所(NHLBI: National Heart, Lung, and Blood Institute)の共同プロジェクトに、世界中の医療専門家が協力する形で始まった世界的な活動。COPDが健康上の、また社会経済的問題として世界に多大な影響を及ぼし、さらに増大していくことを懸念して始動した。医療従事者および社会一般を対象に、「①COPDについての認識・理解を高めること」、「②COPDの診断・管理・予防の方法を向上させること」、「③COPDに関する研究を促進させること」の3つを目的として活動している。2002年から、毎年11月中旬の水曜日を「世界COPDデー」と定め、全世界でCOPDの啓発活動を行うよう呼びかけている。
http://www.goldcopd.com/
【本件に関するお問い合わせ先】
一般社団法人GOLD日本委員会 事務局 (株式会社エム・シー・アンド・ピー内) 担当: 本岡
TEL: 03-3597-0175 info@gold-jac.jp