東京, 2023年2月9日 - (JCN Newswire) - グローバル・コンサルティング・ファームのアリックスパートナーズは、「日本の消費財・小売企業におけるScope3排出量削減のコストインパクトと企業が取るべきアクション」を発表いたしました。
GHG排出量の約9割はScope3である一方、仕入れ先を巻き込んだ取り組みは進んでいない
サステナビリティ活動への積極的な取り組みを企業経営に求める機関投資家の圧力は高まっており、消費財・小売り企業の戦略と行動にも重要な要素となっています。一方、経済価値をないがしろにしたサステナビリティ活動に対する機関投資家の目は厳しくなっており、企業は社会価値のみならず経済価値の向上も達成しなければなりません。
アリックスパートナーズの調査によると、日経225に含まれる食料品・小売業企業18社のGHG(温室効果ガス)排出量全体に占めるScope3排出量(事業に関連する他社からの排出量)の割合は平均89%となり、Scope 1およびScope 2(自社による直接・間接の排出量)の合計よりもはるかに大きいことが分かります。しかしながら、国際的な環境NGOであるCDPのサプライヤーエンゲージメント評価においてAランクと評価され、排出量削減に向けた仕入先との協働が十分と評価された消費財・小売企業は全体の11%に過ぎず、より一層環境負荷を抑えるためには仕入先の巻き込みが鍵となります。
現状の取り組み状況に留まったまま2030年の排出目標を達成するケースでは、営業利益率が平均0.9ポイント低下
仮に日本の消費財・小売企業が現状の取り組み状況に留まり、2030年のScope3削減目標を全て排出権購入で達成する極端なケースを想定してみます。
※各企業のIR資料、The World Bank "State and Trends of Carbon Pricing 2022"、経済産業省"GXを実現するための政策イニシアティブの具体化について"などを基に当社で作成
今回調査した企業のうち、Scope3目標を開示している8社について現状と2030年の排出量目標の差を排出権購入で達成する場合のコストインパクトを試算すると、営業利益率が平均で0.9%ポイント低下することがわかりました。日経225企業の直近年度における平均営業利益率は食料品企業で8.8%、小売企業で6.0%と決して高い水準ではないため、たとえ0.9%ポイントの低下であっても、それら企業の収益性は大きく悪化することになります。
社会価値と経済価値を両立させるために企業がとるべきアクション:
ESG・財務両方を含むKPIを用いたアクションの優先順位づけが大きな効果実現の鍵に
Scope3を中心とした排出量を削減しながら収益性を維持するためには、ESG・財務両方を含むKPIに基づいてアクションの優先順位付けをし、仕入先を巻き込みながら社内外の関係者と大きな変革を起こしていく必要があります。調達において、仕入先の排出量を含むベースライン排出量を把握した上で、ESG関連の質問も含めた仕入先への提案依頼書提示と仕入先評価・選定を行い、経済性・品質・環境データを含むKPIに基づいて取るべきアクションを優先順位付けし、一部の仕入先とパイロットプロジェクトを開始した例もあります。
また、実行に向けては短期および中長期で必要となる自社の能力を構築する必要があります。短期的な成果達成を志向することが多い現場と経営には温度差が生じることもあり、実行力を確保するためには、サステナビリティ専門部署による現状把握や現実的なゴール設定、事業部門への情報提供・啓蒙活動や、事業部門への明確なインセンティブづけなどを効果的に行う組織能力を養うことが鍵となります。
さらに、継続的、定期的にモニタリングを行い、サステナビリティ活動の実行で得た知見を経営戦略とサステナビリティ戦略の統合に役立て、組織全体でより骨太なストーリーに仕上げていくことも重要です。
アリックスパートナーズ東京オフィスで消費財・小売業界を担当する矢嶋大貴は次のように述べています。「多くの国内消費財・小売企業において、Scope3排出量の70%以上は原材料の調達やパッケージの外部委託によるものであるため、GHG排出量削減のためには仕入先の巻き込みが不可欠です。一方、先行する欧米企業においても脱炭素・収益性の両立や仕入先の巻き込みは想像以上に難しく、企業はESGと財務の両方に大きな効果のあるKPIを見極め、アクションに優先順位を付けた上で社内・仕入先を巻き込み、実行に向けて必要となる自社の能力を構築していくことが必要とみています。」
「日本の消費財・小売企業におけるScope3排出量削減のコストインパクトと企業が取るべきアクション」は、こちらから入手可能です。
アリックスパートナーズについて
1981年設立。ニューヨークに本社を構える結果重視型のグローバルコンサルティング会社。企業再生案件や緊急性が高く複雑な課題の解決支援を強みとしている。民間企業に加え、法律事務所、投資銀行、プライベートエクイティなど多岐にわたるクライアントを持つ。世界で約30都市に事務所を展開。日本オフィスの設立は2005年。日本語ウェブサイトは https://www.alixpartners.com/jp/
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